2014年6月29日日曜日

見える化で育つこと・育たないこと

「今、何をする時間ですか?」

 このような一言をA4の紙に書いて、教卓の中に入れています。裏面にはマグネットシールが貼ってあり、必要なときはさっと黒板に掲示できるようになっています。学習に集中できなくなって、本題からはずれたおしゃべりをしたり、掃除中に遊んでしまう場面に出合ったらこの紙が登場し、それを見た子どもが「あぁ、そうだった。今やることはこれじゃない。」と気づく、というわけです。

 年度初め、僕はよく子どもを叱っていました。ですが、それだとお互いに気持ちがよくありません。なんとか自分で気づいて欲しいなぁ、という動機から、「見える化」の手法を使いました。これが効果てきめん。黒板に掲示すると、本人が気づけることももちろん、周りの子がそっと注意するようにもなりました。

 めでたし、めでたし……となりそうですが、ここに気をつけたいポイントがあります。
 教師から叱られようが、紙に書いて掲示されようが、「注意を与えられてから行動を改めている」という構図は変わりません。ここに子ども自身の判断力や目的意識ははたらく余地はないと言ってよいでしょう。

 この紙を掲示して、行動を改めることができたときには、必ず次のようなことを語っています。
    ・気づいてなおせたことはえらい。
    ・この紙が出る前に気づけるのがもっといい。
    ・でも、一番いいのは、この紙の必要がなくなることだ。
    ・いつ、本来やるべきことからはずれてしまったのか、自分でわかる?
    ・そのときに、どのように頭と心をつかえばよかった?
    ・そうか、わかってるんだ。だったら、それをやってみようか。見てるからね。

 こういうことを語りながら、見える化でできることとできないことを痛切に実感しています。

 見える化とは、端的に言うと「行動変容触媒」です。
 行動を変えるきっかけとしてこれほどコストパフォーマンスに優れたものはありませんが、あくまでも触媒であり、見える化自体に力があるわけではないのです。見せられた方の主体が「なぜ」変容しなければならないのか、「どのように」変容するとよいのかについて自覚的でなければ、触媒として機能しません。

 ですから、「紙を見せる」ことと「語り聞かせる」ことをセットにした場合、指導として大切なのは後者です。そして、その後です。紙を見せることによって子どもの行動変容が有り、そのことについて言葉で価値付けを行う。その後の行動を観察し、よくなった点をもう一度伝える。そのフィードバックを積み重ねていくことによって見える化を必要としなくなる子どもを育てたい、というわけです。

 これは、言葉だけで説教するよりも、子どもがまさにその時に行った行動に言葉をつけるという点において「よりまし」な方法です。しかし、望ましくない行動を起こさせるような学習課題だったり、学級経営だったりするわけですから、下の下の指導と言われても反論できません。

 ただ、自分の学級はそこからスタートするしかないわけです。「こんなくだらないことを見える化して学級で使っているんだ……。」という忸怩たる思いは、「よりまし」な学級経営をしようとするモチベーションにもつながります。その意味では自分の学級のレベルも「見える化」されるということでもありますね。その学級に必要な「見える化」は、その学級の到達点を示してもいる。

 見える化では育たない部分を真剣に考えるからこそ、見える化の効力はさらに高まる。

 自分への戒めとして、学級経営にあたっていきたいです。

(藤原友和)

2014年6月20日金曜日

7月12・13日 2日間で学ぶ~すぐに使える教育技術

お申し込みは「こくちーず」からお願いします!
http://kokucheese.com/event/index/185252/


教師力BRUSH-UPセミナー BASIC              2014.07.12

【一斉授業を極める1日】

一斉授業の10の原理(講座)  堀裕嗣      9:30~11:00  FG 鍛冶紘史


授業25分 授業者による解説5分のセット

国語科一斉授業の技術          山口淳一    11:10~11:40

中学国語科一斉授業の技術      山下幸     11:50~12:20

理科一斉授業の技術           齋藤佳太    13:20~13:50

算数科一斉授業の技術          大野睦仁    14:00~14:30

社会科一斉授業の技術         太田充紀    14:40~15:10

中学国語科一斉授業の技術      堀裕嗣     15:20~15:50

講師が答える一斉授業何でもQ&A      
               齋藤佳太  16:00~16:45  FG太田充紀





教師力BRUSH-UPセミナーADVANCE       2014.07.13

「協同学習を知る1日」

協同学習で学びを深める(講座)      堀裕嗣        9:30~10:30
                                          FG 藤原友和

授業25分 授業者による解説5分のセット

協同学習を取り入れた中学国語科の授業      山下幸     10:40~11:10

協同学習を取り入れた理科の授業            髙橋裕章   11:20~12:00

協同学習を取り入れた国語科の授業          藤原友和    13:00~13:30

協同学習を取り入れた社会科の授業     山口淳一   13:40~14:10

協同学習を取り入れた算数科の授業          大野睦仁     14:10~14:40


協同学習を取り入れた中学国語科の授業      堀裕嗣     14:50~15:20

今授業づくりに必要なことは     髙橋裕章   15:30~16:30
                                          指定討論者:堀裕嗣  山下幸
                       山口淳一 大野睦仁
                     FG 鍛冶紘史 
1日参加 3000円
2日参加 5000円

会場は 札幌市産業振興センター 12日はセミナールーム3
                13日はセミナールーム9  です。

お申し込みは「こくちーず」からお願いします!
http://kokucheese.com/event/index/185252/

7月20日 BRUSH帯広集会


教師力BRUSH-UPセミナーin帯広2014

~見直そう1学期 挑戦しよう2学期~


こくちーずでお申し込みください。



今学期,自分のクラスはどうだったんだろう?2学期に向けて今からできることはあるかな?と教師の悩みは尽きないもの。そんな問題に一人で悩んでいませんか?今回も,教育書のベストセラー連発の堀裕嗣氏をはじめ,道内を代表する実践家が帯広に集結!日頃の疑問や悩みなども経験豊富な講師陣が一緒に考えます。ぜひ多くの方々のご参加をお待ちしています!!期限付きの方・初任者の方も多くの参加をお待ちしています!


○日 時 2014年7月20日(日)9:30~16:30

○場 所 とかちプラザ 〒080-0014 帯広市西4条南13丁目1番地

○主 催 教師力BRUSH-UPセミナー ○後 援 北海道教育委員会

○参加費 3000円(学生の場合は2000円)【お弁当代1000円込】       ※講師も交え,みんなで楽しく昼食を食べましょう。

○定 員 40名程度

○講 師 堀裕嗣(札幌市立北白石中学校)・大野睦仁(札幌市立厚別通小学校)

高橋裕章(札幌市立藻岩小学校)


【日程】

9:10~9:25 受付

9:25~9:30 開会セレモニー

     見直そう1学期

9:30~10:30 学級を見直そう 大野睦仁

10:40~12:10 授業を見直そう 堀裕嗣

② 挑戦しよう2学期

13:00~14:00 挑戦しよう2学期~学習発表会~ 大野睦仁・高橋裕章

西村弦(鹿追町立鹿追小学校)

14:10~15:10 挑戦しよう2学期~文化祭~ 堀裕嗣

15:20~16:20 1日の学びのまとめ~

司会:木下尊徳(陸別町立陸別小学校)

指定討論者:堀裕嗣・大野睦仁・高橋裕章・西村弦

16:20~閉会セレモニー




堀裕嗣(ほり・ひろつぐ/札幌市立北白石中学校・教諭、研究集団ことのは代表)


北海道教育大学札幌・岩見沢校修士課程・国語教育専修修了。「実践研究水輪」研究担当・「日本文学協会」・全国大学国語教育学会・日本言語技術教育学会など幅広く活躍。著作は「研究集団ことのは」代表。主な著書に『教師力ピラミッド~毎日の仕事を劇的に変える40の鉄則』『教師力トレーニング・若手教師編~毎日の仕事を劇的に変える31の力』『スペシャリスト直伝!教師力アップ 成功の極意』『エピソードで語る 教師力の極意』『THE 教師力』シリーズ、『学級経営10の原理・100の原則』『生徒指導10の原理・100の原則』『教室ファシリテーション10のアイテム・100のステップ』『一斉授業10の原理・100の原則』他多数。ブログ「裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.comhttp://kotonoha1966.cocolog-nifty.com/blog/
髙橋裕章(たかはし・ひろあき/札幌市立藻岩小学校・教諭)

北海道教育大学函館校卒。本セミナー代表。教育実践サークル「DNA」副代表。1992 年に教育実践サークル「DNA」を南山潤司氏とともに立ち上げる。「DNA」の国語実践研究では、科学的「読み」の授業研究会から読解の実践方法を学び、現在は、その手法を活かした読解指導や論理的思考力を高める授業づくりに力を入れている。『学級経営力・高学年学級担任の責任』『国語科で育てる新しい学力5-読書活用能力の育成』(以上明治図書)などの共著がある。


大野睦仁(おおの・むつひと/札幌市立厚別通小学校・教諭)

北海道教育大学岩見沢校卒。札幌市近郊教育サークル「GO-AHEAD」代表。本セミナー事務局。未来教育シンクタンク。新卒の3年間を重度重複障害の養護学校で過ごす。以来,「いのちの授業」をライフワークとして取り組む。「生」だけではなく,「死」にも目を向けていく授業づくりを続けている。2011年5月北海道新聞社説にいのちの授業の実践が取り上げられる。また,野外活動にも長年にわたり携わり,集団づくりのアプローチとしてのアクティビティの経験を積む。『すぐ使える授業づくりハンドブック』(たんぽぽ出版)『笑顔と対話があふれる校内研修』『クラスに安心感が生まれるペア・グループ学習』(学事出版)『学級経営力・高学年学級担任の責任』『国語科で育てる新しい学力5-読書活用能力の育成』(明治図書)『イラスト版からだに障害のある人へのサポート―子どもとマスターする40のボランティア』(合同出版)など共著多数。ブログ「きらきらひかる@WEBhttp://www.h7.dion.ne.jp/~kirahika


【お申し込み方法】

方法1:こくちーずでお申し込みください。


方法2:以下の7点をお書きの上,FAXかEメールにて下記まで御連絡ください。

1.氏名/2.勤務校/3.郵便番号/4.住所/5.電話番号/

6.FAX番号(ない場合には「なし」と明記)

7.メールアドレス(ない場合には「なし」と明記)

BRUSH帯広実行委員長:木下尊徳(陸別町立陸別小学校 教諭)

FAX(015627-4540  E-mailsontoku@space.ocn.ne.jp

※セミナー終了後に懇親会を予定しています。案内は当日の集会内で行います。

こちらもたくさんのご参加,お待ちしています!

2014年6月18日水曜日

担任不在で最も困るのは、子ども達

 先日まで体調を崩し入院していました。退院してみると学校では運動会の取り組みの真っ最中でした。行事の中で子ども達を成長させようと計画していた自分にとって、その時間を最初から共有できなかったことを残念に思っています。

 入院中、当然発病の原因や対策について教わるわけですが、原因については複数考えられるのではっきりとしないということを言われました。その原因の中にストレス、疲労の2つの可能性が挙げられていました。

 よく思い返してみると、4月に転勤をしました。環境が変わると、それに適応するために大変苦労したという方が多いと思います。僕も例に漏れず、職場への適応や地域の様子について理解するのに苦労をしたように思います。
 また、新年度業務を進めていくうちに、「これもやらなくちゃ」、「そういえばあの仕事が…」なんて言いながら、退勤が遅くなることもありましたし、少年団の活動を終えてから仕事に取りかかり、帰宅がさらに遅くなったということもよくありました。

 もちろん遅く帰宅したりするわけですから多少の自覚はありますが、「まだ無理がきくだろう」、「ここをしのげば…」などと考えていたことが多かったと思います。転勤したばかりだから、年度初めだからということでストレスや疲労をあまり自覚しないままに日々を過ごしていました。結果、睡眠や休養の時間を確保できないまま電池切れを起こしてしまい、今回の入院となったと僕自身は結論づけています。

 目先の仕事に追われていくと、どんどん苦しくなって体力的にも精神的にも余裕がなくなってきます。そのしわ寄せは確実に子どもたちに影響します。とはいえ、仕事が多いのも事実ですから、どのようにして仕事の工夫を図っていくかが重要になります。だから自分自身を体力的にも精神的にも追い込まないよう、現在はできるだけ次の週のことは先週の段階であらかじめ決まっている状態にしています。
 また、体調を崩してしまうと子どもたちとの関係が日ごとに希薄になっていくことを感じました。そうならないためにも、無理をせずに休むことも必要です。体の調子が悪いなら病院に行くべきでしょう。徹夜なんてしてしまうと復調するのに時間がかかります。

 
 今回のことを教訓として、早く退勤して体を休めるように、土日に仕事を持ち帰らないように気をつけて毎日を過ごすようになりました。担任が不在になって最も困るのは、子ども達なのですから。 

(鈴木 将之)

2014年6月17日火曜日

コミュニケーションをとる

2年間の理科専科を経て、久々に担任に戻りました。
担任って、こんなにも忙しかったかしら......?
と、ふとした時に思わず考えてしまうほど、
忙しい毎日を送っています。

先日、運動会を終えました。
何かと言えば、男子は男子、女子は女子!
と言いたげな様子を見せていた5年生。
まぁ、1年かけて薄らいでいけばいいかな?
くらいのゆったりした気分で見守っていたのですが......
運動会当日の朝、
男女関係なく肩を組み、円陣をつくり、
スローガンを叫んでグラウンドへ飛び出して行きました。

今年、初めて取り組んだスタンツも、
結局のところ、一度も表立ったところでの不満を
聞くことはありませんでした。
元々の資質もあるのでしょうが、
ひたむきに健気に練習に取り組んできました。

さて、どちらの出来事も、周囲の先生方に随分ほめていただきました。
ですが、子ども達にとっては、当たり前。
なんでほめられているのかわからなかったようです。

そして、担任である私には、若干の心当たりが。
それは、子ども達との交換日記です。
振り返りジャーナルを、アレンジしたものです。
直接会話できる日は、ジャーナルをもとに簡単な会話を。
時間がない日は、じっくり読んで長めのコメントを。
実は、このジャーナルの中では、
子ども達は異性への不満も、スタンツの辛さも
遠慮なく書いていました。
それを受け入れた上で、会話したりコメントを書いたりしてきました。

おそらくですが、これが要因だったのではないかと思っています。

直接コミュニケーションをとって、
受け入れてるよ、大丈夫だよ、と伝え続けていること。
この大切さを感じています。

運動会までは、うまくやってこれました。
10日後には宿泊学習がやってきます。
このあと、果たしてどうなるのか、
まだまだわかりません。
うまく行かなくなる日がくるのかもしれません。
それでも、続けようと思っているものです。

さて、そんな私ですが、
大人とのコミュニケーションでは大いに悩んでいます。
子ども達とコミュニケーションをとるようには、
うまくいかないものですね。
うまく伝えられない。
相手の真意がわからない。
こんなことばかりで、随分疲れを感じています。
どうしていいのか、途方に暮れることも多いです。
でも、コミュニケーションを取ろうと、
なんとかやっているところです。
一緒に働いている以上、
コミュニケーションを取らずには
やっていけませんから。

いろんなことを、ゆるゆると、
余裕をもってやっていきたいなぁと
願う毎日です。

文責  水戸ちひろ



2014年6月1日日曜日

学校行事で新たな価値観を!


中学校ではこれから陸上記録会や学校祭を迎えます。これらの行事をとおして学級の団結力を高めようと工夫されている方も多いことでしょう。

 私は過去に担任したクラスで学校行事を通して徹底して1つのことを訴え続けたことがあります。それは「勝ち負けだけが全てではない」ということです。おそらく同じようなことを語られる先生方は多いと思いますが、私はこのことをことあるごとに語り続けました。この学級では「結果よりも大切なものがある」というのが1つの合言葉にすらなっていました。

 一方、別の学級では学校行事ではとにかく勝つことを標榜してきたこともあります。どうすれば賞が取れるか、どうすれば記録を伸ばせるか、そういったことを目的に据えました。勝利が学級にもたらすものは大きいと思います。

 おそらく前者の学級の卒業生たちは私が後者の指導法をとっていたことを知ると驚くでしょう。もちろん後者の学級も同様です。なぜならそれだけ徹底して年間を通して同じメッセージを送り続けていたからです。しかし私は意図的にこれらを使い分けていたつもりです。それは「新たな価値観を提供する」というものです。前者の「勝ち負けが全てではない」という指導は結果主義的な空気があった学級で、後者の「勝利を目指す」という指導は競争の経験の乏しい学級でした。

 今接している子どもはいつか社会に出て、そこでいろいろな価値観に出会います。それらに対応するには子ども自身が多様な価値観に触れておくことが大切です。しかし子どもは私たちが考えているよりも狭い価値観しか持ち合わせていません。そこで学校行事を通して子どもに新たな視点を与えるということを意図的に行っていくのです。学校行事では集団づくりはもちろん、その集団にない価値観を提供するチャンスとして捉えるようにしています。
(髙橋和寛)