2014年7月13日日曜日

その子にあった伝え方

 給食中泣いている児童がいた。
 どうしたのかと近くに呼んで話を聞いてみると,
「今日の給食のパン,黒糖(こくとう)パンなのに,黒砂糖(くろざとう)パンだってみんなが言う。ぼくが黒糖パンって言っても信じてもらえない。」
ということだった。
 大人にしてみると笑い話のようなことだ。他の子たちにとっても,どうでもよいことである。
 でも,その子にとっては真剣そのもの。
 教室に掲示してあるこんだてを一緒に確かめてみると,確かに黒糖パンと書いてある。その子にしてみると,自分は正しいことを言っていて,周りの子は間違ったことを言っているという感覚である。ちょっとした言い方の違いなどどうでもよいことのようでも,その子にとっては,重大なことなのだ。ちょっとこだわりがつよいという性格も影響しているのかもしれない。
 そこで,まず話してみた。言い分をじっくり聞いて,諭すように。
 だが,なかなか納得しない。
「全然,わからない!絶対,黒糖パンだ!!」
と,怒っている。
 確かに「黒糖(こくとう)」「黒砂糖(くろざとう)」と耳から入る言葉だと,全くの別物だ。
 こんなとき,その子に預けてあるミニノートを持ってこさせる。
 三冊で100円のミニノートだ。
 ミニノートに,
「物には,いろいろな呼び方があるときがあります。だから,他の人と物の呼び方が違うときもあります。そういうときは,あ~,そういう呼び方もあるんだと思うと楽です。」
と,言いながら書いてあげた。
 そして,「黒糖」「黒砂糖」と漢字で書いて説明を加えた。
 すると,その子はすっかり納得し,何事もなかったかのようにグループに戻って給食を食べはじめた。
 ミニノートに書いた内容は,改善の必要がある。もっとよい書き方があったと思う。
 だが,話して聞かせるだけではなく,文字として書いてあげたことで,その子にとっては「黒糖」と「黒砂糖」がつながったのだ。
 さらに,物にはいろいろな呼び方があること,人によって呼び方が違うことがあることも理解したのだと思う。
 このように,ミニノートに書いて伝えるという方法は,特別支援の研修会で教えてもらった方法である。ノートに書くことで,後で見返すこともできる。そして,だんだんといろいろなことが蓄積されていくのだと。
 この子のミニノートには,特に失敗の受け止め方を書くようにしている。失敗した自分を過度に責めてしまう傾向が見られたからだ。
「チャレンジすることはよいことです。失敗した人ほど成長します。」
「失敗したなと思うだけで十分。つぎ気をつけようと思ったら,もっといい。気をつけて行動したら,さらにいい。」
「失敗は許し合う。失敗は成功のもと。まずは自分を許す。」
「失敗を自分でも許しているところがいい。」
などなど。
 また,クラスの友だちとトラブルになったときには,人物に吹き出しを描き,その吹き出しにその子の思いや相手の思いを書くようにもしている。書くことで,自分の思いだけではなく,相手の思いを感じ取れるようにしたり,どう対応すればよかったのかを伝えたりしている。
 書いてある内容は,まだまだ改善の余地がある。しかし,この子は,少しずつ失敗する自分を許せるようになってきている。そして,失敗をおそれるあまり,やらないことを選択するのではなく,失敗してもいいからやってみようとする傾向がみられるようになってきた。(そのときの気分にもよるのだが・・・。)
 この子は,音声言語で伝えられるよりも,文字言語で伝えてもらったほうがわかりやすいのだと思う。
 人それぞれわかりやすい伝えられ方があるのだ。
 これからも様々なことを,書き方を改善しながら伝え,その子の成長の手助けが少しでもできればと思っている。(三浦 将大)

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