2014年9月2日火曜日

やってみせ・・・

初任校の校長室に山本五十六氏の言葉が掲げてありました。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
以来30年、できるだけ生徒には「やってみせ」てきたつもりです。以下の作文は、1学期の意見文指導でやってみせた作文です。

                    人生の主役をかっこよく演じよう

 先日、薬師寺の僧侶・大谷徹奘(てつじよう)氏のお話を拝聴する機会があった。話のうまさと中味の面白さに時を忘れ吸い込まれていった。40分の話が10分くらいに感じたほどだった。 そのお話の中で心に残った言葉がいくつもあった。特に、『面倒』という言葉。大谷氏は、学生時代の友達との話でわかりやすく教えてくださった。中学・高校と同じ教室で同じ先生に同じ時間だけ教わったはずなのに、返された数学のテストの点はというと、自分が9点、友達が100点だったという話だ。なぜ、同じ環境に置かれていたのに、こんなにも差が生まれたのか。大谷氏は考える。そしてそこではたと気づく。自分が心の中でいつも使っていた言葉があった。それが『面倒』という言葉だ。数学の時間、自分は面白くないのでいつも面(顔)を倒していた。ふと友達を見ると、目を輝かせて先生の話を聞いている。暫し愕然となる。こんな時、面倒くさがりは、やる気のある人を馬鹿にする。 「サイン・コサイン、あんなこと覚えたって社会に出たら何の役にも立たないのに、なに一生懸命やってんだよ。」しかし、その結果は、9点と100点。動かしようのない事実だ。このことから大谷氏は、

 「命を運ぶで 運命 
  その運転手は 自分」


という詩を創る。人生を面白くするのも自分。つまらなくするのも自分。私も、周りの人に楽しくしてもらったり、環境によって面白くなるものだと思っていた。しかし、大谷氏のお話を聞いて、それは間違いだと気づいた。
 私の前任校では、総合的な学習の時間に『ミュージカル』に取り組んでいた。毎年生徒全員で、キャスト・照明・音楽・舞台グループに分かれて約半年間取り組む。学校祭での発表に向けて、全校が一つにまとまって取り組む大切な行事である。当然キャストは脚光を浴び、達成感も半端ではない。感動して涙を流す生徒も多くいた。しかし、裏方はついぞライトを浴びることはない。常に舞台裏でキャストを輝かせることに全力を傾ける。完全なる縁の下の力持ちだ。ミュージカル上演の後、校長先生はこうおっしゃられた。
 「この舞台の主役は○○さん。でも、脇役の皆さんも裏方さんも、自分の人生ではみんな主役なんです。自分の人生の主人公は自分なのです。だから、かっこよく生きていってください。自分を磨いて、人のためにその力を使うのです。そして、男子は、主演男優賞女子は主演女優賞を受賞できるようにね。審査員は・・・、もちろん神様です。」
 この言葉で、ぱっと心が明るくなった。私は誰かが目立っていたり、いい成績を取っていたりすると、心の中で、羨ましいなぁといつも思っていた。そして、なんて自分はちっぽけなんだろうと落ち込むことが多くあった。しかし、自分の人生の中では、自分が主役という言葉を聞いて、みるみるやる気が沸いてきた。どんなに隣の人が輝いていても私の人生にとってその人は脇役なのだ。私の人生を彩る一つの風景にすぎないのだ。だから僻むことも羨むこともなく、自分の人生の主役をかっこよく演じていけばいいのだ。全力で自分を磨いて高めていこう。同時に、隣の人の人生では、私は脇役。精一杯名脇役を演じていきたい。
 今回大谷氏のお話を聞いて、思い通りに行かない自分の人生を、面を上げて面白く生きていこうと思った。どんなことでも、捉え方を変えていけば、また明るい解釈をしていけば、面白い人生になる。かのランディ・バウシュ氏も言っている。「現実は変えられません。だから受け取り方を変えるのです。」私も人生の運転手として、自分の人生を精一杯楽しく面白く生きていこうと思う。


 尚、最近知ったのですが、「やってみせ・・・」には続きがあるそうです。

  話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

0 件のコメント:

コメントを投稿