2015年10月31日土曜日

特別活動で互恵的な人間関係づくり

今年度、初めて学習発表会の担当をやらせていただいた。
2年前の、前任校の運動会以来、久しぶりの行事運営キャップ。
立場上、全校の子どもたちの頑張りっぷりを間近で見られるのがうれしい。役得だ。出番のため入場するときの、緊張いっぱいの顔。出番をやり遂げ、全てを出し切って体育館から出て行くときの充実した顔……いいものである。

行事キャップとしては、全校の子どもたちが安心して取り組めるように、終始裏方に徹する。準備の情報を「学習発表会通信」として発行し、困ったらそれを見て準備できるようにと考えた。先生方の安心が、子どもたちの安心につながるように、ささやかな「見える化」。初任校でやっていただいたことである。新米教師の私は、どれほど助けられたことか。今回、チャンスに恵まれたので、真似させていただいた。

自分の学年学級のことはどうしても後回しになってしまい申し訳なかったが、学年団の先生が“アトリエ主”や“スタジオマスター”に率先して変身してくださり、道具類・音響ともに見事な演出がなされた。休み時間には“アトリエ”や“スタジオ”に集合がかかり、準備や相談が進んでいく。子どもたちはその熱意に刺激されてか、練習にますます熱を入れていった。

本番は2回。児童公開日と保護者公開日。
今回は児童公開日のあることのよさを強く感じた年になった。
児童公開日、ドタバタドタバタ発展途上の劇を見せた3年生。
給食時間に「どの学年の発表が心に残った?」と聞いてみると、予想通り、最後に演じた6年生に圧倒的な支持が集まる。
しかし、理由がいい。
「台本になさそうなことも、しゃべっていた。」
「本当に自分の教室で会話しているみたいだった。」
「だまって立っている人がいない。みんなせりふがなくても振り付けしてる。」
自分たちも劇をやっているからこそ、発見がたくさんあったのだろう。
直後の練習で、子どもたちは驚くほどの上達をみせる。
基本的に、児童公開日から後は通し練習のみで、私からは細かな指導をしない。(今回は場面転換でドタバタしたので、練習の1回は場面転換のみを繰り返して習熟を図った。が、演技そのものに関しては、本番間近になってからむやみに指導を加えるべきでないと思う)
6年生の演技に触発されたに違いない。
結果、間違いなく、3日後の保護者公開日がピークの出来であった。

小学校学習指導要領解説編・特別活動をみると、文化的行事のねらいは次のようである。
「児童が学校生活を楽しく豊かなものにするため,互いに努力を認めながら協力して,美しいもの,よりよいものをつくり出し,互いに発表し合うことにより,自他のよさを見付け合う喜びを感得するとともに,自己の成長を振り返り,自己を伸ばそうとする意欲をもてるようにする。」

今回、一つの典型が確かにあったと思う。
自分のがんばりを通して、他学年の人たちのがんばりを見付ける視点を得る。
見付けたがんばりを自分たちの演技に環流する。
参観した保護者が大いに喜んでくれる。
「自己を伸ばそうとする意欲」が伸びる。
互恵的な、よい循環が生まれていた。

授業時数確保・さらなる行事精選の波の中で、かつてような大々的な特別活動を展開することが難しくなる時流がある。それでも、互恵的な人間関係のもとで円滑な学習ができる環境づくりに、特別活動が有用であることに変わりはない。形は変われど、ねらいは常に大切に。見失うまい。

(斎藤佳太)

2015年10月25日日曜日

1年生の絵の具指導

 一年生は初めてのことがいっぱい。何をするにも新鮮ですが、初めてだからこそ指導を大切にしたいことがたくさんあります。その一つが絵の具の使い方。道具の使い方や色の混ぜ方、塗り方や片付け方に至るまで、その後の六年間……もしかしたらその後にも影響をおよぼすほどかもしれません。

 僕の場合、一年生の絵の具指導の初めは、ワークシートを使って指導しています。手順を踏んで、筆使いや混色の仕方などを教えます。
1枚目:道具の並べ方、色の出し方と広げ方、水の量での色の違い、筆使い(直線)、片付け方
2,3枚目:道具の使い方の復習と筆使い(曲線と点描)
4枚目:混色と筆使い(広いところと狭い所の塗り方。端は筆先を使ってはみ出さないように)
 1回2時間×3回=6時間で絵の具のキホンを指導します。ワークシートはありますが、基本的な指導事項さえおさえて、あとは自由に塗らせています。するとこんな制限の大きそうなワークシートでも個性を発揮して枠にはまらず自由に書いていくから面白いです。ワークシートを使うことで、学年全体がある程度指導内容を揃えて教えることができる利点もあります。図工が苦手な先生も子どもも、ワークシートがあると安心できることもあります。

 ただ、指導内容の確認さえできれば、白紙に向かってもっと自由に書かせたほうが面白いかなと思っています。絵は自由でなくちゃなあと、何回かこのワークシートを使ってみて考えました。これは教えやすさ重視だな、と。もちろん教えやすいことが悪いわけではありませんが、子どもたち主体で考えた時に、もっと自由に描かせたほうが楽しいと思ったのです。

 せっかく作ったけれど、次に一年生担任になる時にはこのワークシートを使わずに指導していきたいと思っています。自由に絵を描ける子どもたちになるように、指導する自分もまた自由に。

【ふりかえり】第74回教師力BRUSH-UPセミナー 兼 第5回思考ツール学習会in函館

第74回教師力BRUSH-UPセミナー 兼 第5回思考ツール学習会in函館
期 日:平成27年10月17日(土)
テーマ:アクティブ・ラーニング×思考ツール×協同学習   
~授業づくりの教材論・システム論・評価論と、それらを全校で機能させるための校内研修体制づくり~
 
講 師:内藤一志(北海道教育大学函館校)     
大野睦仁(札幌市立小学校)     
藤原友和(函館市立昭和小学校)
提 案:長谷川美栄子(附属函館中学校)/長澤元子(函館商業高校定時制)
ファシリテーション・グラフィック:
小林雅哉(伊達市立伊達小学校)/米田真琴(新篠津村立新篠津中学校)/戸来友美(千歳市立信濃小学校)/中原 茜(八雲町立東野小学校)ほか
参加費:2000円
 
日 程:
9:00 開場・受付・準備
9:35 開会セレモニー/ガイダンス 藤原友和
9:40 第1講座「研修づくりで大切にしたい3つのこと」大野睦仁(札幌市・小学校)
10:30 休憩
10:40 第2講座『ALで学ぶ“論理力”を育てる「書くこと』の授業」(藤原友和)
※提案30分+協議50分       
指定討論者:内藤一志・大野睦仁・戸来友美
12:00 昼食
13:00 第3講座『協同学習で学ぶ“コーディネート力”を鍛える「話すこと・聞くこと」の授業』(長谷川美栄子)
※提案30分+協議50分       
指定討論者:内藤一志・米田真琴・藤倉 稔
14:20 休憩
14:35 第4講座『思考ツールで学ぶ“包括的支援を要する生徒”のための国語の授業』(長澤元子)
※提案30分+協議50分
指定討論者:内藤一志・吉野さやか・野呂篤史
15:55 休憩
16:10 第5講座「校内研修をALにしよう!“研修推進ワークシート”による校内研修の活性化」(藤原友和)
16:30 鼎談「校内研修をすすめるってどういうこと?」大野睦仁×鹿野哲子×小林雅哉
16:50 閉会セレモニー
18:00~ 懇親会
 
【ふりかえり】
 もう十年になる「教師力Brush-Upセミナー」と、昨年度から始めた「思考ツール学習会」のコラボという形で企画させてもらった今回の企画。様々な意味で新しいイベントとなった。自分のタイムラインにシェアした友人たちのふり返りをみると、とても充実していたようだったということ、そしてその充実の中身が一人一人違うことに、企画者としてはとても満足している。とてもとても満足している。
 それは、学習会の中身というのももちろんだが、「藤原個人としての学びやすい場」に、自分で思っていたよりも「来てくれた人にとって益があった」ということを実感することができたからだ。内藤先生(北教大函館校)は言語活動を指して「学習可能性を高める環境構成の一つ」という言葉で表現していたが、僕はそれを教師の学びの場レベルで実現したいという思いがあった。つまり、参加者それぞれが、それぞれのレベルで、何らかの発見をし、強烈な内省を生むしかけができないだろうか、という試みでもあった。
 日程をみるとわかるように、タイトルは並列、三本の提案は校種も切り口も違う、まとめも行わず、最初から最後まで「自分の実感に響くところだけ」聞いてもらいたいというつくりになっている。ただ、校内研修という軸を通すことで、自分たちの日常に返していくにはという思考が働き続けるようにもしている。
 僕は企画者であり、提案者であり、ファシリテーターでもあった。そして、大野さんの基調提案に該当する大野さん自身の研究部的ライフヒストリーを聞いたあとは、自分の提案を大野さんの講座に引き寄せて展開し、ファシリテーターとして協議を進行した。つまり、一日の前半でモデル提示をした。そしてそのあとは自動運転化した流れにのり、それぞれ際だった個性をもつ参加者たちを「じゃましないように」心がけて1日を過ごした。結果、これまでに自分自身も体験したことのなかった空間が生まれた。化学反応といおうか。創発の嵐といおうか。1日経ってもまだ興奮している。
 大野さんの講座は、これまでの研究主任としてのありようをふりかえり、現在の取り組みと展望を語るものだった。大野さんの明るい人柄と、レジリエンスの高さは万人の知るところだが、それが学校づくりのレベル、経営者の視点で行われていることに圧倒されるものだった。しかし、僕のような物量作戦をとるわけではない。徹底して興味を抱かせ、関心をよせ、全員参加で「明後日を考える」取り組みをすすめていたのだ。洞爺での学習会でも、その一端を聞くことができたが、前任校と現任校の対比と、それから「パレート」および「マーケティングイノベーション」をひきながら、「それでも諦めない」ありようを提案していただいたことで、参加者にとって、研修を進める楽しさ・実りの豊かさを示すことになった。基調講演として、こんなに素晴らしい提案はなかったと思う。
 それに見事にかみあったのが、指定討論者の戸来さんだ。大野さんのあとが僕の講座で、その協議には大野さん・戸来さん・内藤先生に指定討論者として登壇してもらった。フロアからQを引き出した後のセッションで、戸来さんは自らを「いつか研修主任になりたいとあこがれている私」という立場表明をして語り始めた。それが、正規に計画されている研修とは違った場面で、いわゆる現職研修を活性化している日常の開陳となったときに、大野さんのちょうどセットになって「研修が機能するとはこういう姿」という具体的な像が立ち現れた。それに触発される形で、内藤先生が藤沢市の事例を紹介してくれた。ここに一つのまとまりができた。「校内研修実機能論」のような話になったのである。
 午後の長谷川先生の講座は、この夏に行われた日本国語教育学会全国大会での提言をベースにしたものだった。事前の学習会において内容を知っていたぼくは、その緻密さと大胆さ、提案性にしびれていた。なんとか協議を「きちんと中学国語で」行いたかった。そこにヨネマが絶妙な絡みを見せてくれた。長谷川先生の提案内容に触発されたヨネマは、本気で「聞きたいことがある」と真っ向からぶつかっていった。このやりとりのおもしろさは会場にいた人でなければわからない、熱を帯びたものだった。そしてその議論をひっくり返す、中学数学教師、藤倉。算数の研究に熱心に取り組んでいた戸来さんもそこに参加する。一触即発か、というような場面さえもあった熱い議論を引き取って、「めざす教科知」という話で参加者を納得に導いた内藤先生はやはりすごいな、と思う。僕はこの場面では後ろに引いて、存在を消していた。国語の話がちょっとマニアックになってきたな、というところで僕が介入しようとした瞬間に、登場する藤倉。真っ赤になって議論を説明し直すヨネマ。若い人たちのまっすぐな情熱に、僕はなんだか感動してしまった。そして長谷川さんも、それを正面から受けて、まったくぶれずに話して下さる。本気と本気がぶつかる刺激的な場面だった。
 そして続くのが長澤先生の思考ツールの提案。これまでに聞いたことがないくらいにBrushUpされていて、驚かされた。商業高校の定時制に通学する包括的支援を要する生徒、の現実の姿を知っている僕は、ただただ、その取り組みに敬意を払うばかりだが、それとともに、プレゼン能力の著しい伸びにも感激した。この人は頭がいい。本当に地頭がいいのに、それを表に出さない。結果だけを残していく。尊敬する仲間である。さて、ぼくがここに指定討論者としてお願いしたのが、八雲で中学校の特別支援を担当する吉野さんと、今金高等養護で教鞭をとる野呂さんである。つまり、特別支援の窓口から、この生徒たちについて、その背景について、僕たちが日常を目にしている世界の偏縁に存在するカオス性に目を向けたかったのである。企画の意図を伝えた後は、完全にお任せ。これもまたおもしろい議論になった。出会うべきで出会ってなかった人たちを出会わせた。僕にはそういう手応えがあった。
 僕の箸休め的な「研修推進ワークシートの実際」のあと、最後の鼎談。大野さん、鹿野さん、まさやんのトークである。大野さんが「議論の本棚」を用意してくれて、鹿野さんが「その本棚だったら、あたしはこれを載せる」と話し、まさやんは、「僕の本棚はもうちょっとこういう形をしているんですよね……」と訥々と語る。鹿野さんは前日に、研究部長として町内の公開研究会を終えたばかり。それも三年間のまとめとして、である。いま、このタイミングでなければできない話。取れたての果実のような話。三年間で醸した美酒のような話。それを大野さんというソムリエが紹介してくれる。そしてまさやんがそれにあうアペリティフをサーブしてくれる。そんな時間になった。
 この鼎談の最後は、三人から「きょうよかったこと」というテーマでひとことずつはなしてもらった。そしてフロアにも同じテーマでおしゃべりしてもらって、そのまま終わる、という流れ。ぼくはこのオープンな終わり方がとても大切な意味を持つ一日になった、と自負している。あくまでも今日に限れば、ということだ。
 こんな濃い一日を過ごしたので、身体はくたくた。精神的には大充実。
 懇親会では、これまでみたことがなかったくらい、饒舌に語る恩師の姿に涙が出そうになった。
 お礼を述べるべき相手が多すぎるので、ひとまずここまで。

2015年10月24日土曜日

ボクたちが意識しなきゃならない未来

ボクたちが意識しなきゃならない未来って、どの未来なんだろと思う。

ALが導入される。
そんな話がされる時、必ず未来のことが語られる。
これからの日本は…これからの教室は…と。
それはすごくわかる。
そして、ボクらは、そういう未来を見なきゃならないこともわかる。
でも、ボクが目の前にしている子どもたちは、明日という未来を生き、
1年後には、このクラスから離れ、また違うクラスになる。あるいは、中学校に入っていく。
そこの未来も、しっかり見なきゃならないんじゃないかと思う。

ボクの教室は、未来を見据えて…こんなことをやっています!こんなものを使っています!こんな取り組みを通して、こんな力をつけています!
大切なことで、ステキだなと思う反面、子どもたちが生きる1年後の未来や、5年後の未来と、どうつながっていくのかとも思う。

今の目の前にしている子どもたちが出ていく社会、いやもっと現実的に考えなきゃならない。多くの子どもたちが働く職場では、どんな資質や能力が期待されているのだろう。本当にAL導入で語られている資質や能力が期待されているのだろうか。
自分たちが学んできたこと、経験してきたことのギャップで苦しむことはないだろうか。
幼稚園から小学校へ。小学校から中学校へ。それぞれの接続で苦しむ子が出てきていることと無関係じゃない気もしている。

 「ギャップ(違い)があるのが社会。それを経験することも大切だ。」
 「『今と未来がつながっていかない場合もある。つなげていく努力が必要だ。』と語るべきだ。」
 「本質をついた取り組みをしていれば、どの未来もでいかされていくはずだ。」
 いろんな声が聞こえてくる。

ただ間違いなく言えることは、ボクたちは、未来をつくる一部を担っているという自負と責任をもって
取り組まなければならないということ。
ボクは、遠い未来と近い未来を行ったり来たりしながら、ぶれたり迷ったりしながら、それでも、子どもたちと一緒に前に進んでいきたいと思う。

2015年10月16日金曜日

第74回教師力BRUSH-UPセミナー 兼 第5回思考ツール学習会in函館

第74回教師力BRUSH-UPセミナー 兼 第5回思考ツール学習会in函館

期 日:平成27年10月17日(土)

場 所:北海道教育大学函館校(北海道函館市八幡町1番2号)

テーマ:アクティブ・ラーニング×思考ツール×協同学習
  ~授業づくりの教材論・システム論・評価論と、
   それらを全校で機能させるための校内研修体制づくり~

講 師:内藤一志(北海道教育大学函館校)
    大野睦仁(札幌市立小学校)
    藤原友和(函館市立昭和小学校)

提 案:長谷川美栄子(附属函館中学校)
     長澤元子(函館商業高校定時制)

ファシリテーション・グラフィック:
    小林雅哉(伊達市立伊達小学校)
    米田真琴(新篠津村立新篠津中学校)
    山川香緖里(北斗市立谷川小学校)
    中原 茜(八雲町立東野小学校)ほか

参加費:2000円

日 程:
 9:00 開場・受付・準備
 9:35 開会セレモニー/ガイダンス 藤原友和
 9:40 第1講座「研修づくりで大切にしたい3つのこと」
      大野睦仁(札幌市・小学校)
10:30 休憩
10:40 第2講座『ALで学ぶ“論理力”を育てる「書くこと』の授業」(藤原友和)
      ※提案30分+協議50分
      指定討論者:内藤一志・大野睦仁・戸来友美
12:00 昼食
13:00 第3講座『協同学習で学ぶ“コーディネート力”を鍛える「話すこと・聞くこと」の授業』(長谷川美栄子)
      ※提案30分+協議50分
      指定討論者:内藤一志・米田真琴・(調整中)
14:20 休憩
14:35 第4講座『思考ツールで学ぶ“包括的支援を要する生徒”のための国語の授業』(長澤元子)
      ※提案30分+協議50分
指定討論者:内藤一志・吉野さやか・野呂篤史
15:55 休憩
16:10 第5講座「校内研修をALにしよう!“研修推進ワークシート”による校内研修の活性化」(藤原友和)
16:30 鼎談「校内研修をすすめるってどういうこと?」
      大野睦仁×鹿野哲子×小林雅哉
16:50 閉会セレモニー
18:00~ 懇親会


お申し込みは「こくちーず」から↓ http://kokucheese.com/event/index/311921/

2015年10月3日土曜日

ほめること・叱ること



「静かにしなさい」
「座りなさい」
「読んでいる本を片付けなさい」
「ふらふら動くのを止めなさい」
「立ち歩かない」
「手をいじるのを止めなさい」

私たちは、ほめることが、子どもの行動や心を落ち着かせるのを知っているのに、一日、あるいは一時間の授業の中で何度も使っている指示ではないだろうか。こうした指示は、数人の子の不適切な行動に対して行うことが多いと思うが、これらの指示に従わないと、教師は、イライラし出す。

「どうして言うことをきけないんだ」
「何度言ったらわかるんだ」
「話を聞いてるの?」
「もう〇年生なんだよ」

といった叱責というか、批判・非難してしまう。こういったネガティブな指示を何度も繰り返しているうちに、はじめは数人の子に見られた不適切な行動が、他の子へ少しずつ増えていく。これに対して、不退転の決意を持って、〇〇すべきと同じ指示を出していたら、子どもの行動は良くなっていくだろうか。無理である。むしろ状況は悪くなる。否定的で対立的なやり方は、何も生み出さない可能性が高い。2回、3回で従わない指示は、10回続けても従わないことが多い。その際に、さらに与えてしまう指示。

「みんなもやっているから、あなたもやるんだよ」
「みんなもたいへんなんだから、あなたもがんばりなさい」
「(怖い顔で)やりなさい!!」

こうした同調的で威圧的な方法は、さらに抵抗を助長する。もし従ったとしたら、教師の熱意というより運が良いだけかもしれないと思う。たとえば、他の同僚教師や保護者によるフォローがあったなど。

今年、特別支援学級の担任になり、指示の出し方がとても重要であり、それは特別支援学級に限らず通常学級にも汎用性のあることを実感する。一つの指示に対して、素直に受け入れられるものもあれば、その子にとってなかなか受け入れがたいものもある。その際、子どもたちは、教師を試す行動に出る。文句を言ったり、叫んだり、ひどいときにはかんしゃくを起こしたり。低学年ほどこうした傾向は高いように思う。たいていは、子どもの試す行動なので、教師が一貫性を持った指示を続けていれば、そこから学級のルールを学んでいく。しかし、教師への個人的な抗議と捉えてしまうと、信頼関係を築くことは出来ない。子どもたちへの心に寄り添うことなど、不可能だなぁと思う。不適切な行動をするのが当たり前で、「知らない」「出来ない」を「出来る」ようになるように支えるのが教師の仕事。ルールや指示があいまいではないか。指示を一度に多く出し過ぎたのではないか。子どもの年齢に合わないような指示だったのではないか。子どもたちを納得させる指示を、ポジティブなメッセージとともに伝えたいと思う。

たとえば、遊びに夢中になり、片付けが出来ない場合。「〇〇時まで遊んでもいい」と事前に告知する。それでも止められない状況が続いたら、今度は、「〇〇時になったら、〇〇するよ」と「やめる」ことではなく、次に何をするのか具体的な行動を示す。それでも止められない状況が続いたら、、、大きな声で言われることが苦手なのかもしれない。逆に小さすぎて聞こえていないかもしれない。ホワイトボードで伝えたり、視覚支援カードを使ったりする方が有効かもしれない。より指示を強くしたり、非難したり、ネガティブな指示を繰り返す前に、2回、3回と状況が続いたときに、指示を見直したい。

ほめればいいのか?と思うかもしれない。たしかにほめることは効果的だ。否定的で威圧的な指示よりは、ずっといい。ただ、「ほめる」ことにもいくつかの種類がある。朝の挨拶における見た目をほめるようなアイスブレイク的なものもあれば、教師の指示に従ったことに対して賞賛するものもある。あるいは、成功に向けての努力の過程をほめる問題解決的なものもある。一斉の場でほめた方がいい場合もあれば、個別にほめた方がいい場合もある。

たくさんほめればいいわけではない。叱ることも、指示も、個に合わせて行うことが重要だ。うまく指示が通らないとき、子どもの行動をよく見て、自分自身が変わっていきたい。

(鍛治裕之)