2016年1月10日日曜日

【ふり返り】第77回教師力BRUSH-UPウインターセミナーin千歳2016

 今回の企画は、二つの問題意識に貫かれていました。
 一つは、「みんな、アクティブ・ラーニングのことをどのように考えているんだろう?」ということです。そしてもう一つは、「アクティブ・ラーニングで上手に学べる子ってどんな子で、そのような子どもを育てるアプローチとはどのようなものなのだろう?」という問いです。
 一つ目の問いを追究していくために、一日目は、小学校、高等学校、そして大学の“現場”からの発信をお願いしました。

【1月7日】
 オープニングセッションは、大野睦仁先生(札幌市立三里塚小学校)による進行で、「ALの理解度はどれくらい?」などの4象限に自分のイマココを書きだし、それをシェアするという流れで行いました。問題意識を掘り下げながら、この二日間の学びの視点を共有する時間でした。

 次に講師の先生方による“ゲンバのホンネ”実践報告です。
 小学校は、西村弦先生(鹿追町立鹿追小学校)の実践報告です。ピンクシャツデーを初めとしたダイナミックな実践は、一人の教員の工夫によるものではありません。文部科学省の指定を町全体で受けている取り組みで、小中高の接続を目玉とする研究開発実践を背景としています。“ゲンバのホンネ”らしい、裏話も交えながらの大規模な実践の数々には、考えさせられるところが大きかったです。もちろん、その中で西村先生が果たしてきた役割はとても大きく、その実践の背景には西村先生自身の特異とも言えるキャリアがあったことは記しておきたいと思います。

 高等学校は、熊本県から溝上広樹先生(熊本県立苓明高等学校)のアクティブ・ラーニング実践の報告です。溝上さんは、「・」の着かないアクティブラーニング、キャリア教育畑からの先駆者である小林昭文先生の研究グループで学ばれ、ご自身も先生方の勉強会を主催されている若手のホープです。受験圧力の低い島の高校で、意欲を引き出し、生徒の学習スタイルの変革も同時に行っていくという緻密な実践を報告して下さいました。

 大学は難波美帆先生(北海道大学)に、スーパーグルーバル大学として文科省からも期待されている現場で、どのようにしてアクティブ・ラーニングを進めていくか。これも“ホンネ”の話を聞くことができました。おそらく、大学の現場のここまで突っ込んだ話を聞ける機会はなかなかないものと思われます。

 三名の講師の先生のお話を伺った後は、「座談会」です。講師の先生方と、本会代表の髙橋裕章先生、そして、堀裕嗣先生を交えて、「私たちの考えるアクティブ・ラーニング」をテーマに、様々な角度から、“いま、私たちが置かれた現在地”について深めていきました。方法ではないといわれる。では、〈何〉なのか。これがだんだんと明らかになっていったように思います。ここでのお話を聞くにあたり、溝上先生の「ALの方法と概念と論を区別しないといけないのではないか。」という講座中のご発言がとても機能していたと思います。

 その後、初日の最後のコマです。新企画、「模擬授業をみんなでつくろう」です。2日目の午前中に提案される4本の模擬授業を、この場で、参加者の皆さんも交えながらつくろうという参加型企画です。4班に分かれ、模擬授業者、コーディネーター、授業協力者のところに、参加者がそれぞれ移動して話し合います。イメージは、学年による指導案検討会です。そして、この構造は、ジグソー学習にもなっているというチャレンジでした。懇親会でも授業についての話が続き、明日への期待を抱かせるものとなりました。

【1月8日】
 午前中は、「特別の教科 道徳」での模擬授業です。
 低学年は辻村佳子先生(斜里町立朝日小学校)による授業。「自分のよさに気づく」ために、絵本を使った授業です。
 中学年は中原茜先生(八雲町立東野小学校)。「生命尊重」の授業で、多様な視点から考えるという展開が、まさしく今求められている授業像だと感じました。
 高学年は田名部圭一先生(今金町立今金小学校)。「にじいろマフラー」という絵本を使った、「友情」の授業。絵本の構成を生かしながら、まさかの展開に会場では涙をこぼす参加者も。
 中学校からは髙橋和寛先生(札幌市立札苗中学校)の授業提案です。「勤労観」をテーマに、バーチャル就職活動を通して何度も話し合いをするという、「考え、議論する」道徳をご提案いただきました。

 午後は「グラフィック・トーク」による協議と、「乱入・指名型フィッシュボウル」による座談会です。
 まずは「グラフィック・トーク」
 模擬授業をしている間、授業づくりのコーディネーターになっていただいた先生方には、壁に貼った模造紙に「グラフィック・レコーディング」をしておいていただきました。2回目の増澤友志先生、初挑戦の大野睦仁先生、そして何度かやっている斎藤佳太先生と藤原です。
 まずは授業者に、模造紙の前に立ってもらいました。全員でその前にあつまり、授業者から「ねらい/機能度/ALとの関連」について3分でお話してもらいます。場所を移動しながらこれを4セット。それぞれの授業の主張を全員共有したところで場をほどきます。参加者は各自、好きなところに言って授業についておしゃべりします(ギャラリートークとパネルチャットシステムを組み合わせたフレームワークですが、これには研究集団ことのは主催イベントでの知見によるところが大きいです。学恩に感謝申し上げます)。

 座談会の前に、藤原より、「アクティブ・ラーニングが求められる背景」ということから、人口動態予測と、北海道での実際、そして大学入試制度改革について提案しました。また、校内研修でどのようにこれらの話を位置付けていったのかということに関して、実践報告を交えながらお話する時間をいただきました。
 座談会は「フロア参加型」と銘打っております。そこで、フィッシュボウルを採用しました。輪の中で始まった議論。それによって個々人の内省が始まります。進め方については課題も見つかりましたので、今後の企画に生かしていきたいと考えています。

 最後に、大野睦仁先生のクロージングセッションです。オープニングとほぼ同じ問いを使って、自分自身の変化を感じるという仕掛けでした。

 アクティブ・ラーニングを考えていく上で、それぞれの校種ごと「縦の流れ」としてみていくことを意図した二日間でした。今後につながるいくつもの出会いがあり、参加された皆さんとの対話の中からたくさんのヒントもいただくことができました。この学びを次の動きにつなげていきたいです。ご参加ありがとうございました。

                                                (藤原友和)

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