2016年7月1日金曜日

修学旅行の作文を「ビフォー」&「アフター」で書いてみました

 先日、修学旅行に行ってきました。振り返りに作文を書かせたいのですが、なかなか筆が進まない…という子どもの指導に苦労することもあります。そこで、私は「見通しを持たせる」ことで、作文を書きやすくできないか、と考えてみました。
 まず、修学旅行に行く前に、「予想作文(ウソ作文)」を書かせます。「予想作文」のねらいは次の3つです。

①作文に対する嫌悪感を取り除く。
②文章の構造(起承転結)を学ぶ。
③「転」での「ひねり」(展開)を学ぶ。


 ここで大切なのは、子ども達に、自分の「ウソ」で、どれだけ読み手を引きつけるかを考えさせることです。読み手を引きつけるには、出だしの工夫なども挙げられますが、ここではそこに目をつぶり、あえて「転」での、展開だけにしぼりました。書くことが「ウソ」だけに、「転」では、大幅に話を広げられるし、あっと言わせる仕掛けを考えて書ける、という「予想作文」最大のメリットをいかしてみようということです。
 小樽での自主研修の計画を立てた時点で、子ども達に作文を書くことを伝えます。書く前に、自分の作文をどんな話にするのか、次の4つの中から選ぶよう、指示しました。

ア.おもしろい話  イ.かわいそうな話
ウ.おそろしい話  エ.感動する話


 さらに、条件を設けます。それは、既習の言語技術を使用することです。

比喩、擬人法、体言(名詞)止めの中から、1つは必ずどこかで使うこと

 この条件設定により、作品評価の曖昧さを少しでも減らすことができるかなと考えたからです。
 子ども達は、最初こそ戸惑いますが、ウソを書いていい、という安心感やおもしろさなどから、嬉々として取り組みました(ただし、ウソはウソでも、実際にありえそうなウソ、ということにしてみました)。ヴェネツィアガラス美術館で展示物を壊してしまう話、お小遣いを落としてしまったけど、優しい観光客に助けてもらう話、お寿司屋さんにインタビューをしたら、礼儀を褒められてトロをごちそうになった話等々、みんなで楽しく読み、一言コメントを付け合いました。

 その後、実際に修学旅行へ行った後に、また作文を書かせるのです(「アフター作文」)。手順は、「予想作文」の時と同じですが、今度は「予想作文」ではないので、ウソは書けません。しかし、子ども達には「予想作文」で獲得したものがあるので、嫌がりもせず、書き出しもスムーズでしたし、表現も工夫されていました(1コマ45分で書ききれなかったのは、2名)。なんといっても、読み手を意識した作文になりました。「アフター作文」の内容は、もちろん「予想作文(ウソ作文)」と違うもので構いません。大切なのは、生活文の書き方が、技術として身についたか、ということです。

 日常というのは、それほど事件性やドラマ性があることばかりではありません。それだけに、日常を生き生きと描写できる国語的な技術を獲得することは大きいことです。「予想作文」は、ウソを書くとは言いながらも、実は、事実を想定したシミュレーション作文となっています。子ども達は、実際にはどんなことが起こりうるのか、真剣に考えていました。この作業こそ、「見通しを持たせる」ことにつながっていたのではないかと思います。そして、「見通しを持たせる」ことの良さが、実際の作文に生かされたのではないかと思うのです。  【山口淳一】

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