2016年8月18日木曜日

通信への引用文で振り返る1学期

 担任した学級では、学級通信を日常の学級経営の柱の一つとしています。学級の様子や担任の思いを保護者に伝えるという本来の目的に加えて、子供たちと学級の今を考えるための場としても活用しています。具体的には、配付時に教師が通信を読み聞かせ、教室の中での子供たちの姿に価値付けをしたり、大事にしたいことを語ったりしています(基本、通信は一枚一義で発行しています)。
 そんな私の通信では、引用をよくします。引用は、伝えたい価値を補強したり、印象づけたりするために効果的です。
 さて、夏休み中に、一学期に発行した通信を整理しました。すると、一学期のそれぞれの時期に応じた傾向が見られました。通信に載せた引用文とその時に考えていたことを紹介します。


(1)4月~新学期スタート…ゴールへ向けて走り出す!

◆「やるしかないのに、そんな簡単なことのわからない人間が多すぎる」ジョー・ストラマー
◆「昨日より今日、今日より明日、明日より明後日、日々変わり続ける事が大切です」パスカル・バルボ
◆「人間は、なんと知ることの早く、おこなうことの遅い生き物だろう」ゲーテ
◆「頭のいい学者はまた、何か思いついた仕事があった場合にでも、その仕事が結果の価値という点から見るとせっかく骨を折っても結局たいした重要なものになりそうもないという見込みをつけて着手しないで終わる場合が多い。しかし頭の悪い学者はそんな見込みが立たないために、人からはきわめてつまらないと思われる事でもなんでもがむしゃらに仕事に取りついてわき目もふらずに進行して行く。そうしているうちに、初めには予期しなかったような重大な結果にぶつかる機会も決して少なくはない。」寺田寅彦/科学者とあたま

 新学期が始まったばかりの時期は、「とにかくやってみよう」ということを伝えるものが多かったです。最近の子供たちは、間違うことを嫌がる子(避ける子)が増えています(大人でも大勢の前で間違いたくないですよね)。しかし、そこを放置していては教室での学びが深まりません。それゆえのメッセージです。全員に挑戦することを求めているので、その裏返しとして「頑張っている人を笑うことはいけないね。」「笑われたら、次から頑張れなくなるね。」ということも繰り返して指導しています。


(2)5月~集団作りの時期…「ここぞ」で踏ん張りがきく子・集団に!

◆「努力した者が全て報われるとは限らん。しかし!成功した者は皆すべからく努力しておる!!」鴨川会長・はじめの一歩
◆「体力 精神力 最後は根性」真城信弘・バクマン
◆「番狂わせの可能性ってのは全員が信じて初めてゼロじゃなくなんだ。ベンチを含めた全員のうち誰か一人でも勝利を疑い始めた時点で勝ちはにげていくんだ。」野宮朋美・リアル7巻
◆「あきらめたらそこで試合終了ですよ」安西先生・スラムダンク
◆「他人にやらされてた練習を努力とは言わねえだろ」茂野吾郎・MAJOR
◆「やりたいことを思いっきりやるためには、やりたくないことも思いっきりやんなきゃいけないんだ」駒野勉(机くん)・ちはやふる

 学級の仕組みが整ってきた5月は、「努力の大切さ」「全員がすること」に重点を置いたものが増えました。特に、スポーツ系のマンガからの引用が増えています。これは、運動会を意識しての取り組みが増えてきていることと無関係ではありません。


(3)6月~運動会後の日常…自分を見つめ、向上的変容を目指す!

◆「ありのままの自分でいろ。好きな料理で人生を楽しむ。星の数に惑わされず、料理に集中することさ」パスカル・バルボ
◆「反省から学ぶことはたくさんあるけど本当に大事なのはそっから先に行くことだ」細美武士

 6月は、通信の中から引用の件数が減りました。変わって増えたのが子供たちの作文やノートの写真です。子供たちどうしで学び合う部分を増やしていきました。そんな中での引用は、失敗を乗り越える強さやたくましさ、自分を信じることの大切について語っているものでした。一人一人が自分を成長させることについて考えてほしいという願いがあったからです。


(4)7月~一学期を振り返る…それでいいのか自分(子供も教師も)!?

◆「人が不可能と思うとき、やりたくないと決めているのだ」スピノザ(オランダの哲学者)
◆「練習はウソをつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通にウソつくよ。」ダルビッシュ有

 7月も6月に続き、子供たちの作文やノート、エピソードなどを多く載せていました。6月との違いは「工夫」が見えるものを中心に選んでいた点です。丁寧で整っているだけでは物足りないよ、というメッセージを伝えていました(伝わっているか?)。引用についても今の自分を振り返らせるようなものを選んでいました。


 こうして、その時々に自分が伝えていたこと(何を伝えたかったか)をふり返って見ると、どのタイミングで何を大事にしてきたかを再確認することができました。
 もちろん、担任している子供たちの実態によっても、教師のキャラクターによっても、指導内容やタイミングは異なると思います。自分が唯一の正解だとは思っていません(いつもこれでよかったのかと悩んでいます)。

 大事なことは、目の前の子供たち一人一人を「とにかくよくみること」です(気になるあの子ただ一人に向けたメッセージもありだと思ってます)。子供をよくみることで、何が必要かは明らかになるはずです。
(山本和彦)

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