2016年11月30日水曜日

第83回教師力BRUSH-UPセミナーin函館ふり返り

1 企画趣旨とその実現に向けたオープニング・セッション

(1)集会コンセプト

 この度の函館集会のコンセプトは「〈みんなでつくる〉を考える」というものでした。教師が一方的に押し付ける授業や学級経営の在り方ではなく、子どもたち「みんなでつくる」在り方を考えていこうというものでした。
 うんうん。そうですよね。
 みんなでつくるって、きっといい学級なんですよね。

(2)オープニングの問い

 冒頭、オープニングセッションで、この日のメインファシリテーターである三浦さんは次のように投げかけました。

「〈みんなでつくる〉って本当にいいの?」

 え。

 この問いによって参加者は一気に「思考モード」に切り替わりました。無前提に「よい」のかどうか、本当に考えて実践してきただろうか。そういう内省に向かいます。
 午前中の実践提案3本、模擬授業2本は、上記の問いに貫かれて参加者の思考を刺激し続けました。

2 集会の実際

(1)実践提案×3

 斎藤佳太さんによる低学年の実践は、いずれ「みんな」に向かうための、自分づくりを報告してくれました。教師がつくる安心感がベースだということが根底にあります。
 中学年では加藤慈子さんが学級の「色」をつくっていくにあたって思考ツールを位置づけた実践を紹介してくれました。「アイドル会社」の動画には萌えました。ここでも、活動のプロセスを思考ツールという枠にのせるとやりやすいよ、という教師のつくった仕掛けが提案されています。
 高学年の中原茜さんの報告は、腹式の学級における自分たちで進める授業の在り方を提案するものでした。校内研修として取り組んでいる実践には、子どもたちが自律的に学ぶ姿とともに、それを可能とする地道な積み重ねが報告されていました。

(2)模擬授業×2

 三浦将大さんの模擬授業は理科の「気体の性質」でした。二段階の実験を組み合わせて、ペットボトルの中に入っている気体の正体を突き止めるという学習活動は、とても意欲をかきたてるものでした。対話を生む仕掛けや、追及を持続させる活動構成など随所に工夫が凝らされた授業提案でした。
 長澤元子さんの模擬授業はひたすらドイツゲームをするというものでした。二つのグループに分かれて、次々といろんなゲームを経験します。長澤先生が付かない方のグループでは「預け先がない」という理由で連れてきていらした2年生の息子さんがゲームのルールを説明してくれました。最初は戸惑いがちだった参加者も、徐々に笑い声が漏れ、2ゲーム目には笑い声が起きるタイミングが揃ってくるなど、一体感を感じさせる雰囲気で授業は終わりました。
 二つの授業は、ともに教師が発問・指示・説明の積み重ねによって授業が進んでいくのではなく、「間接的にねらいに導いていく」という仕掛けがありました。ここにも「みんながつくる」を考えるヒントがあらわれていたように思います。

(3)大野睦仁先生の「卒業カウントダウン」提案

 9月には別の企画で函館にいらして、「大野学級のゲンザイチ」を提案してくださった大野先生。今回は卒業までの「59」日間をどのように過ごしていくのか、現在までの取り組みを振り返りながら、学級通信などをもちいて提案してくださいました。
 その中で、本日のオープニングに絡めて提示された二つのフレーズが印象に残りました。

 ・「みんなでつくる学級」をつくる…
 ・「みんな」の中には…

 詳細は参加者のみにとどめておきますが、「あぁ、そうだよな」と強く納得したフレーズでした。私たちはいかに前提を疑わず日々を過ごしているのか…と気づかされた瞬間でした。

(4)ふり返りは参加者全員でファシグラ

 最終コマはリフレクションの時間です。
 「全員でファシグラってみよう」という三浦さんの投げかけ。
 これに参加者はとまどうかと思いきや…。
 会場にはこれまでのファシグラが全部貼られています。
 一コマにつき、二人ずつで描かれていますし、描いている姿も見てきました。そういうわけで「どう描いていいかわからない」ということもなく、全員がすらすらと描き始めます。12名全員が書き上げたところで、一人ずつ今日の学びを発表して聞き合い、クロージングセッションが終わりました。いわゆる「ペイントリフレクション」という方法がとられたわけです。

3 参加者・事務局の振り返り

 11月26日(土)に開催された学習会でしたが、その後もFBグループ内で振り返りが続いております。ブログ公開用に書いてもらった振り返りには、次のような言葉が並びました。
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 今回の函館集会は、実践報告3本、模擬授業2本、大野さんの講演も全てが素晴らしかったと思います。そのような場を「増幅する装置」として、オープニングセッション・クロージングセッションをファシリテートした、三浦将大さんの果たした役割は大きかったと思います。簡単に言うと、「それまでに書かれていたレコーディングも材料にしながら、全員でファシグラ」をしたんです。いわゆる「ペイントリフレクション」に近いものと思いました。Nextにつながります!(藤原友和/主催)
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オープニングでは,その時点で“みんながつくる,みんなでつくる教室”に必要なことを出してもらいましたが,出された言葉に参加者の意識の高さを感じました。
クロージングでは,学びをファシグラってもらいました。オープニングでの考えにプラスαがあったり,より具体的な言葉になっていたりと,それぞれの学びが反映されたFG・発表になりました。
より深い学びになるように,オープニングでの「問い」,FGの効果的な活用など,改善すべき点もあらたになりました。(三浦将大/メインファシリテーター)
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 各講座・模擬授業の内容について、常時2名のグラフィッカーが同時にレコーディングをしていきました。後から比較すると、グラフィッカーによってクローズアップされた言葉が異なります。それぞれの問題意識の違いが表れていると思われます。自分のノートと見比べながら読むことで、講座内容の理解がさらに進む仕掛けがありました。これが1日の濃い学びを支えていました。(斎藤佳太/実践提案/BRUSH本体事務局)
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 今回初めてグラフィッカーとして参加させていただきました。
 実際にやってみると,描くことに精一杯でしたが,どの言葉をどのように描くか,たくさんたくさん考えることができました。
 また,複数人で1つの講座をグラフィックする事で気付いた事の中には重要視する部分が異なるという事もあります。
 人によって心に残る部分が異なるからこそ,なぜ・どうしてそう描いたのかを互いに言及し合う事で,より深い学びを得られるグラフィックになると感じました。
受講者として,グラフィッカーとして,みんなで高め合えることができた1日でした。(鈴木綾/グラフィッカー)
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 今回は「みんながつくる、みんなでつくる」がテーマでした。
 三浦先生のオープニングセッションではいくつか問いがありましたが、特に「みんなでつくる学級はいい学級なのか?」という投げかけで1日の学びの軸が決まったように感じます。

 みんなでつくる学級は、いいか悪いかより「すごい」というイメージでした。つくるのが大変だからです。特に大野先生には「これを実践すればこんな学級になる!」という光を全面に伝えるのではなく、「Aの実践をして結果は◎。けれど、負担に感じている子もいる可能性もある。たとえば…(具体的な事例が続く)」というように成果と課題をセットで伝えていただきました。さらにその日のうちに学びをファシグラでまとめる…。
 how-to実践を「与えるだけの集会」ではなく、与えられた実践をきっかけに「みんなで考える、みんなが新たな価値をつくることができる集会」になりました。(中原茜/実践提案)
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(まとめ 藤原友和)

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