2017年1月15日日曜日

何気なくしていること

 日々,何気なくしていることがたくさんある。このときも何気なく子どもにあるお願いをした。
 
 外部講師にお礼を書く機会があった。一人ひとり小さな紙にお礼のメッセージを書き,色画用紙に貼った。色画用紙には,「○○さん ありがとうございました」と題字を書き,渡すことにした。そして,ある子にその題字を書くことを何気なくお願いした。すると,その子はとても喜び,「緊張する~」と言いながらも,はりきって書いてくれた。その子の日記には,「頼まれてうれしかった。緊張したけど,一生懸命がんばって字を書いた」という内容のことが書かれていたほどだ。
 また,周りの子たちも書いた字を見ながら,「お~」「うまい!!」などと言っていた。さらに,「○○(子どもの名前)うまいからな」と言っていた子もいた。

 この何気なくお願いしたできごとから感じたことが二つある。
 一つ目は,何かをお願いするということは,言葉には表していないが,「あなたを認めていますよ」というメッセージを伝えている可能性があるということだ。ある意味「隠れたカリキュラム」の一つである。

以下引用開始
『「隠れたカリキュラム」とは、「教育する側が意図する、しないに関わらず、学校生活を営むなかで、児童生徒自らが学びとっていく全ての事柄」を指す。学校・学級の「隠れたカリキュラム」を構成するのは、それらの場の在り方であり、雰囲気といったものである。』
引用終了

引用元
文部科学省人権教育の指導方法等の在り方について[第二次とりまとめ]
 第1章第1 3人権感覚の育成を目指す取組』
 
 
 このできごとの場合,お願いしたことによって,「あなたは,字が上手だよ」ということ伝えていたかもしれない。また,周りの子たちにも,「先生は,○○(子どもの名前)は字が上手だと思っている」「字が上手だから,○○(子どもの名前)にお願いしたんだ」ということを伝えていたかもしれない。さらに言えば,「自分はお願いされないから,字はうまくないんだな」とか,「先生は,自分の字は上手だと思っていない」ということも思わせていたのかもしれない。

二つ目は,力を伸ばす機会をいろいろな子につくっているのかということだ。
 題字を書いた子は,お礼のために書くということを知っていた。だから,相手や目的意識をしっかりもって書いていた。それが,「緊張する~」という言葉にも表れていたと思う。その子は,緊張感の中書くことで,授業だけでは得られない,力を伸ばす大きなチャンスを得ていたともいえる。
 では,そのような貴重な機会を,他の子たちにも果たしてつくっているのだろうか。また,今後つくっていけるのだろうか。自分が,その子にお願いしてしまったことで,実は他の子の力を伸ばすチャンスを奪っていたともいえるのだ。
 
 日々,何気なくしていることがたくさんある。その何気なさが,子どもたちに意図していないメッセージを送っていたり,力を伸ばす機会を奪ったりしている場合もあるということを忘れないようにしていきたい。
(三浦 将大)

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